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段階 2 / 12六角形の芽

氷の中では、水分子どうしが六員環をつくります。 ただしこの六角形は、紙の上に描く正六角形のような平面ではありません。 上下に折れ曲がった «いす形» です。 この立体的な折れ曲がりが、後の段階で決定的に効いてきます。

このページの内容

  1. 四面体から六角形へ
  2. いす形——平面ではない
  3. 6個そろえば氷になるわけではない
  4. この段階の数値

操作方法:モデルはドラッグで自由に回転できます(スマートフォンでは1本指でなぞる)。「真上から」ボタンで顕微鏡写真と同じ視点、「真横から」で厚みや層構造が分かる視点になります。スライダーのあるモデルは、形を決めている量そのものを動かせます。

四面体から六角形へ

前のページで見たように、水分子は4本の «手» を持っています—— 水素2本と孤立電子対2本です。 氷の中では、この4本すべてが水素結合に使われます。 自分の水素2本を隣の分子の孤立電子対に差し出し、 自分の孤立電子対2組に隣の分子の水素を受け取る。 その結果、理想的なバルクの氷では、各分子は4個の分子と結ばれます (2本を供与し、2本を受容)。表面・欠陥・核形成中の小さなクラスターでは、 4個に満たない分子も存在します。

4本の手が互いに 109.47° で開いているとき、 分子をつないでいくと自然に六員環ができます。 なぜ六角形かというと、四面体の角度でつながる原子が閉じた環をつくるとき、 最も無理のない大きさが6個だからです。 ただし、四面体角だけから環の大きさが一意に6と決まるわけではありません—— どの環ができやすいかは、三次元ネットワーク全体の結合関係・密度・圧力にも依存します (高圧氷には別の環構造もあります)。 ダイヤモンドやシリコンが同じ四面体結合で同じ六員環をつくるのも同じ理由です。

氷Ihの層内いす形(アームチェア型)六員環の一例。氷Ihには、六方積層によって層をまたぐ舟形(ボート型)の六員環も同数含まれます(立方晶Icはすべていす形)。「平面表示」ボタンで«上面投影に相当する平面表示»に切り替わります——平面図自体が誤りなのではなく、上下の折れ曲がりを省いた投影図です(O–O 距離 2.76 Å は平面化しても保っています)。酸素骨格と環をつなぐ水素の一部だけを表示しており、6個の完全な H₂O(水素12個)ではありません。

いす形——平面ではない

上のモデルで「真横から」を押すと、六員環が平らでないことがはっきりします。 6個の酸素原子は、1つおきに上下に振れています。 その段差は 0.92 Å ——結合長 2.76 Å のちょうど3分の1です (O–O = 2.76 Å と理想四面体角を仮定した理想模型の幾何値で、 すべての環で実測された普遍値ではありません)。

なぜ 3分の1 なのか。結合が 109.47° で開いているとき、 結合方向の c 軸成分は結合長の 1/3 になります。 これが六員環の «波打ち» の高さを決めています。 このいす形の折れ曲がりが、氷Ih の層構造—— 上下2枚が組になった二重層(バイレイヤー)——の正体です。

折れ曲がりは装飾ではありません。教科書ではしばしば平面の六角形として 描かれますが、実物の環はこのように立体的に折れ曲がっています。 そしてこの折れ曲がりから、氷Ih が二重層の積み重ねになること、 基底面のステップの高さが c/2 = 3.68 Å になること—— 第3・第4段階で使う2つの事実——が直接出てきます。

6個そろえば氷になるわけではない

「6個の水分子が六角形をつくれば、それで雪結晶の芽ができる」—— これは正しくありません。

環が1つできただけでは、まだ氷ではありません。 実際の核形成には、はるかに多数の分子と、それを支える環境(低温、過飽和、しばしば異物の核)が必要です。 液体の水の中にも六員環に近い局所構造は絶えず生まれては消えており、 それだけでは結晶になりません。

六員環は「氷らしい局所構造の代表」として見るのが適切です。 本物の結晶になるには、この環が三次元的に、しかも長い距離にわたって 規則正しく続く必要があります——それが次のページです。

この段階の数値

備考
環の O–O 結合長2.76 Åすべて等しい
結合角109.47°理想四面体角
環の上下の段差0.92 Å= 2.76 Å ÷ 3(理想模型の幾何値)
環の差し渡し約 0.5 nm酸素の中心間
1分子あたりの水素結合4 本H 2本 + 孤立電子対 2本

初版:2026-08-05 以前(正確な作成日は記録なし——判明し次第記入)|最終更新:2026-08-12