雪結晶グローバル分類 CP6 の立体モデル

骸晶状結晶(CP6a 骸晶四角形・CP6b 多結晶骸晶四角形・CP6c 多重骸晶四角形・CP6d 複雑骸晶多角形・CP6e 骸晶角柱・交差角板・CP6f 骸晶砲弾・四角形・CP6g 多角形骸晶集合・CP6h 複雑柱面構造)

グローバル分類(菊地ほか 2012;Kikuchi et al. 2013)の【CP6:骸晶状結晶(Skeletal-type crystal)】は、低温域でよく見られる結晶です。ふつうの結晶は平らな結晶面で囲まれた多面体ですが、雪の結晶が大きく成長し始めると、稜は外側へ伸びるのに面の部分の成長が取り残されたような形になります。論文はこれを「柱を含む骨組みはできているのに外壁がまったくできていない建築途中の家」にたとえています。これまで知られていた骸晶の多くは、角柱・砲弾・厚角板などの外形はそのままで、底面や柱面が結晶の中心に向かってくぼんだ「蟻地獄」のような形でしたが、極域の観測データが増えるにつれて、それとは異なる骸晶が数多く見つかり、8 小分類にまとめられました。単体の大きさは数百 µm から数 mm、複雑柱面構造では数 mm を超えます(平均的な大きさは 0.2〜5 mm)。成長温度は −25 ℃以下ということのほかは、まだはっきりしていません(図鑑)。

骸晶四角形の実際の姿(図鑑 pp.104–106 の写真から)。 長方形や台形の板で、縁が高く立ち上がった浅い箱のように見え、内側には稜の線(内側の四角形や、角から内側へ向かう斜めの線)が走ります。端が砲弾の先端のように斜めにとがるものもあります。偏光顕微鏡で青一色か黄一色に見えるのは、結晶面が平面で単結晶の柱面であることを意味し、論文はこれを「骸晶角柱を a 軸に沿って切った縦断面の半分」「直交する 2 本の砲弾のうち片方の柱面 1 枚だけが成長した長方形」と説明しています。柱面なので c軸は四角形の長辺方向、つまり面に沿った向きです。

モデルの見方。 骸晶を「縁(立ち上がった枠)+稜の骨組み+取り残された面(半透明)」で表しています。偏光顕微鏡の青・黄は結晶の向きの違いを示すので、モデルでは向きの異なる結晶ごとに色を変え、「c軸を表示」で各結晶の c軸を出せるようにしました。「面を半透明で表示」を外すと骨組みだけになります。

画面をドラッグすると回転、ホイール(スマートフォンではピンチ)で拡大縮小できます。各モデルは図鑑の写真と論文の記載をもとにした模式図で、縁の高さや骨組みの太さは見やすさのため誇張しています。

1. CP6a:骸晶四角形Skeletal tetragon

外形が四角形の骸晶で、1 個の単結晶です。偏光下では青一色か黄一色に見えます。図鑑の写真では、縁が高く立ち上がった浅い箱のような長方形(台形)で、内側に稜の線が見え、一端が砲弾の先端のようにとがったものもあります。モデルは長方形の縁を立ち上げ、内側に稜の骨組み(内側の四角形と角から伸びる斜めの稜)を置き、面を半透明にしたもので、一端を少しとがらせてあります。「分解」で縁・稜・面の 3 つの要素に分かれます。

骸晶四角形(単結晶) c軸(長辺方向)
構造のポイント
  • 四角形は角柱(砲弾)の柱面 1 枚。c軸は面に沿った長辺方向で、角板(c軸が面に垂直)とは 90° 違う。
  • 縁と稜だけが成長し、面が取り残された骸晶構造。縁が立ち上がって浅い箱のように見える。
  • 一端が斜めにとがるのは、砲弾の角錐側に当たる部分。

2. CP6b:多結晶骸晶四角形Polycrystalline skeletal tetragon

外形は骸晶四角形と変わりませんが多結晶で、偏光下では向きの違う結晶が別の色に見えます。論文は「直交する 2 本の砲弾のうち柱面が成長したのは 1 本だけ」と説明し、図鑑の写真には、四角形の一部が別の色の帯になっているものや、2 つの四角形が十字に交差したものが写っています。モデルは結晶 A の四角形の中に、c軸が直交する結晶 B の帯を置いたもので、「分解」で B を引き出すと、直交するもう 1 本の砲弾の柱面であることが分かります。

結晶 A(c軸は長辺方向) 結晶 B(c軸は直交) c軸
構造のポイント
  • 外形は CP6a と同じ四角形。偏光なしでは CP6a と区別できない。
  • 結晶 B は c軸が A と直交する。「分解」で B を c軸方向へ引き出すと十字に交差した形になり、写真の十字形の結晶に相当する。
  • 「c軸を表示」で 2 本の c軸が直交していることが分かる。

3. CP6c:多重骸晶四角形Multiple skeletal tetragon

外形は CP6a・CP6b と変わりませんが、成長の途中で結晶主軸(c軸)が 90° 回転している結晶です。偏光下では青から黄、黄から青へと色が変わって見え、図鑑の写真では帯状に色が変わるものや、L 字に折れ曲がったものがあります。モデルは長辺方向に 3 区間に分け、中央の区間だけ c軸が 90° 変わるようにしました。「分解」で区間ごとに分かれます。

c軸が長辺方向の区間 c軸が 90° 回転した区間 c軸
構造のポイント
  • 1 枚の四角形の成長中に c軸が 90° 回転したため、区間ごとに向きの違う結晶になる(多重)。
  • 偏光下では区間の境で青・黄が入れ替わる。
  • CP6b との違い:CP6b は直交する 2 本の砲弾の組み合わせ、CP6c は成長の途中で軸が変わったもの。

4. CP6d:複雑骸晶多角形Complex skeletal polygon

骸晶構造をもつ 2 つの結晶が多角形(多くは五角形)をつくる結晶です。図鑑の写真(p.109)では、家の形をした五角形が中央の線で左右に分かれ、左右で色(結晶の向き)が違います。モデルは五角形を頂点から底辺へ向かう線で 2 つの結晶に分け、それぞれに縁と稜の骨組みを付けました。

結晶 A 結晶 B c軸
構造のポイント
  • 五角形の外形を、骸晶構造をもつ 2 つの結晶が分け合っている。境界は頂点から底辺へ向かう線。
  • 2 つの結晶で c軸の向きが違う(多結晶)。
  • 「分解」で 2 つの結晶に分かれる。

5. CP6e:骸晶角柱・交差角板Combination of skeletal columns and crossed plates

はっきりした骸晶構造をもつ角柱と、交差角板との集合です。図鑑の写真(pp.109–110)では、中空の骸晶角柱に何枚もの四角い板が交差して重なっています。モデルは面の取り残された中空の六角柱に、その一端で直交する 2 枚の骸晶四角形(交差角板)を付けたものです。

骸晶角柱(中空) 交差する骸晶四角形 c軸
構造のポイント
  • 骸晶角柱:六角柱の稜だけが成長し、柱面・底面が取り残された中空の柱。
  • 交差角板:2 枚の四角形が共通の線で直交して交差する。板どうしは別の結晶。
  • 「分解」で角柱と交差角板を離せる。

6. CP6f:骸晶砲弾・四角形Combination of skeletal bullets and tetragon

骸晶構造をもつ砲弾と、単結晶の骸晶四角形との集合です。図鑑の写真(pp.110–111)では、中空の骸晶砲弾が X 字に交差し、そこに四角形が組み合わさっています。モデルは 2 本の中空の骸晶砲弾を先端で交差させ、一方の砲弾の柱面と同じ平面に、底面側へ張り出す骸晶四角形を付けました(四角形の c軸=その砲弾の軸方向)。

骸晶砲弾(中空) 骸晶四角形(単結晶) c軸
構造のポイント
  • 骸晶砲弾:六角柱と角錐の稜だけの中空の砲弾。2 本が先端を共有して X 字に交差(多結晶)。
  • 骸晶四角形:砲弾の柱面 1 枚が大きく成長したもので、その砲弾と同じ c軸をもつ単結晶。
  • 「分解」で砲弾どうしと四角形を離せる。

7. CP6g:多角形骸晶集合Combination of skeletal polygons

砲弾集合の砲弾に当たる結晶が、多角形の骸晶構造でできている結晶です。集合全体は多結晶ですが、多角形のそれぞれは単結晶です。図鑑の写真(p.112)では、外側へ広がる台形状の中空の骸晶が中心から 3〜5 個放射状に出ています。モデルは、中心側が細く外側が広い台形の骸晶(縁付き)を 5 方向に放射状に置いたものです。

多角形の骸晶(それぞれ単結晶) 各多角形の c軸
構造のポイント
  • 砲弾集合の各砲弾が、台形などの多角形の骸晶に置き換わった形。細い側(砲弾の先端側)が中心を向く。
  • 多角形 1 個 1 個は単結晶だが、向きはばらばら(集合としては多結晶)。
  • 「分解」で多角形を中心から離せる。

8. CP6h:複雑柱面構造Complicated prism plane structures

骸晶状結晶の中で、骸晶構造をもった柱面がもっとも複雑に絡み合った形で成長したもので、大きさは数 mm を超えます。図鑑の写真(pp.112–113)では、四角い中空の骸晶(柱面)が鎖のように端でつながったり、横に枝分かれしたりしながら、向きを変えて連なっています。モデルは大きさの違う骸晶四角形 十数個を、端や側面で次々につなぎ、折れ曲がり・ねじれ・枝分かれを加えて絡み合った構造にしました。色の違いは別々の結晶であることを示します。

柱面(結晶 A 群) 柱面(結晶 B 群) 柱面(結晶 C 群) c軸
構造のポイント
  • 骸晶構造の柱面(四角形)が、端どうし・端と側面でつながって鎖状・枝分かれ状に連なる。
  • つなぎ目ごとに向きが折れ曲がったりねじれたりして、全体が絡み合った立体になる。
  • 「分解」で 1 枚ずつ引き離すと、それぞれが骸晶四角形と同じ構造であることが分かる。

参考文献

  • 菊地勝弘・梶川正弘(2011):雪の結晶図鑑.北海道新聞社,pp.104–113(CP6 骸晶状結晶の解説と写真).
  • 菊地勝弘・亀田貴雄・樋口敬二・山下晃・雪結晶の新しい分類表を作る会メンバー(2012):中緯度と極域での観測に基づいた新しい雪結晶の分類―グローバル分類―.雪氷,74(3),223–241.(CP6 の定義と骸晶の説明、表3、図1-2)
  • Kikuchi, K., Kameda, T., Higuchi, K., Yamashita, A. and Working group members for new classification of snow crystals (2013): A global classification of snow crystals, ice crystals, and solid precipitation based on observations from middle latitudes and polar regions. Atmospheric Research, 132–133, 460–472.