雪結晶グローバル分類 CP7 の立体モデル

御幣状結晶(CP7a 御幣・CP7b 砲弾付御幣・CP7c 交差角板付御幣・CP7d 角柱御幣・CP7e 対称御幣・CP7f 氷柱御幣・CP7g 多重菱形御幣)

グローバル分類(菊地ほか 2012;Kikuchi et al. 2013)の【CP7:御幣状結晶(Gohei twin-type crystal)】は、新しい雪結晶の分類表を作るきっかけとなった、−25 ℃以下の低温下で観測される最も代表的な結晶の一つです。御幣の名称は、神社のしめ縄や正月の門松などに見られる御幣によく似ていることから著者の一人(KK)が付けた名前で、今日では外国でも “Gohei-twin(御幣双晶)” と訳されて使われています。Twin は結晶学的には双晶と訳されますが、双子・双生児と同様の意味合いを持っています。結晶の成長方向に向かって、左右対称に角柱や砲弾の一柱面が異常に成長したものと特徴づけられます。成長する先端の角度は約 80°(極域で採集された 116 個の測定では約 77° に強いピーク、約 54° に副次的なピーク:Sato and Kikuchi 1985)で、偏光顕微鏡では青系統と黄系統のほぼ直交する柱状結晶の向きの違いによる色合いからとても美しく見えます。結晶の大きさは、最も単純な最初の一段目だけの双晶では成長方向に 100 µm 以下で、十分成長した結晶では数 mm 以上になるので、肉眼でも容易に確認できます。成長温度範囲は −25 ℃以下で、水飽和の条件が必要らしいこと以外はまだ良く分かっていません。平均的な大きさは 0.2〜5 mm です。

できかた(Sato and Kikuchi 1985)。 御幣は「過冷却の雲粒が凍ったもの」から育ちます。雲粒が凍るとき、基底面の上に一時的に立方晶構造の薄い層ができることで多結晶になり(Kobayashi et al. 1976)、向きの違う結晶粒が生まれます。隣り合う 2 つの結晶粒の柱面が小さな角度(β < 20°)で交わると、その粒界(双晶境界)が外へ伸びて御幣になります。実験でも人工的に作られ、核形成時の水蒸気圧は水飽和かそれに近い状態でした。また御幣は砲弾集合の一部として成長することが多く、これが CP7b(砲弾付御幣)に当たります。

中心は球ではありません。 出発点は雲粒(10〜50 µm)ですが、凍った瞬間に多結晶になっているので、中心にあるのは「向きの違う結晶粒が寄り集まった核」です。しかも御幣は 0.2〜5 mm まで育つので、もとの雲粒は全体の 1/10〜1/100 でしかなく、写真でも中心に丸い玉は見えません。モデルでは中心核を短い六角柱の集まりとして描き、大きさも控えめにしてあります。

御幣の骨組み。 中心核から成長方向へ、左右対称に「一柱面だけが異常に成長した」板状の羽が段になって付きます。羽は柱面(10-10 面)が伸びたもので、左右の結晶は c軸がほぼ直交する関係にあり、偏光下で 2 色に分かれて見えます。「段の数」スライダーで一段目だけの双晶から十分成長した結晶までを、「先端の角度」スライダーで開き角を変えられます。

矛先(CP8)との違い。 どちらも双晶ですが、成長している先端の角度が御幣は約 80°、矛先は約 60° です。また御幣では双晶境界の凹入角成長という骸晶角柱、または渦巻状に柱面の一面だけが異常に成長を繰り返す構造が見られるのに対し、矛先では十分な骸晶構造の成長が認められない点が特徴です。

画面をドラッグすると回転、ホイール(スマートフォンではピンチ)で拡大縮小できます。各モデルは論文の記載と代表写真をもとにした模式図で、寸法比は見やすさのため誇張しています。

1. CP7a:御幣Gohei twin

低温下で成長する最も代表的な結晶の一つで、中心核から一方向にのみ成長したものです。左右対称に羽が段になって並び、先端の開き角は約 80° です。「段の数」を 1 にすると、最も単純な一段目だけの双晶になります。

羽(結晶 A) 羽(結晶 B) 中心核(多結晶の凍結雲粒) 成長方向
構造のポイント
  • 中心核(多結晶の凍結雲粒)から一方向へ、左右対称の羽が段になって成長する双晶。
  • 羽は柱面が伸びたもの。左右の結晶の柱面が小さな角度で交わり、その粒界が外へ伸びる。
  • 先端の開き角は測定で約 77° にピーク(副ピーク約 54°)。「先端の角度」スライダーで変えられる。
  • 左右の羽は c軸がほぼ直交する向きで、偏光下では青系統と黄系統に色分かれして見える。

2. CP7b:砲弾付御幣Gohei twin with combination of bullets

御幣(CP7a)の成長方向と反対方向に、砲弾集合(C4d)が成長したものです。モデルは御幣の中心核の反対側に砲弾が放射状に付いています。

羽(結晶 A) 羽(結晶 B) 砲弾集合 成長方向
構造のポイント
  • 御幣の成長方向と反対側に砲弾集合(C4d)が付いている。
  • 御幣の部分は CP7a と同じ構造。

3. CP7c:交差角板付御幣Gohei twin with crossed plates

御幣の成長方向と反対方向に、放射交差角板(CP4c)が成長したものです。モデルは反対側に交差角板の組が放射状に付いています。

羽(結晶 A) 羽(結晶 B) 交差角板 成長方向
構造のポイント
  • 御幣の成長方向と反対側に放射交差角板(CP4c)が付いている。
  • 御幣の部分は CP7a と同じ構造。

4. CP7d:角柱御幣Gohei twin composed of multiple columns

結晶の外形は一見 CP7a と同じように見えますが、成長方向に左右対称に成長している柱面が、左右とも同じ結晶主軸を持つ角柱か砲弾が成長したものです。モデルでは左右の羽を同じ色にして、主軸がそろっていることを表しています。

羽(左右とも同じ主軸の角柱) 中心核(多結晶の凍結雲粒) 成長方向
構造のポイント
  • 外形は御幣(CP7a)と同じだが、左右の羽が同じ結晶主軸を持つ角柱・砲弾でできている。
  • 偏光下では左右が同じ色に見えるため、CP7a と区別できる。

5. CP7e:対称御幣Double symmetrical gohei twin

中心核から一方向に左右対称に成長する CP7a に対して、この結晶では中心核から両側にしかも対称に成長したもので、双晶が中心核から左右に双晶成長したものといったほうが分かりやすい形です。両側に合わせて 10 段以上もの御幣が成長しているのを見ると「アッ」と息を呑むくらいの感じがする結晶です。

羽(結晶 A) 羽(結晶 B) 中心核(多結晶の凍結雲粒) 成長方向
構造のポイント
  • 中心核から両側へ、しかも対称に御幣が成長している。
  • 両側合わせて 10 段以上に成長したものも観測される。

6. CP7f:氷柱御幣Icicle-like gohei twin

御幣の特徴である成長方向に左右対称で、はっきりした角柱や砲弾の一柱面が成長した構造を示しています。この結晶は単結晶で、氷柱のように団子状に連なっていて、先端の御幣成長以外ははっきりした柱面の成長が認められないのが特徴です。英語版の分類論文では「角柱・砲弾・団子状の結晶が連なって、氷柱がつながったように見える」と説明されているので、モデルでも短い角柱・砲弾・団子状の結晶を交互に連ねてあります。

団子状に連なる部分(単結晶) 先端の御幣成長 成長方向
構造のポイント
  • 単結晶で、短い角柱・砲弾・団子状の結晶が連なり、氷柱がつながったように見える。
  • 先端にだけ御幣の成長(左右対称の羽)が見られ、途中でははっきりした柱面の成長がない。

7. CP7g:多重菱形御幣Multiple lozenge gohei twin

一寸変わった成長機構を持った結晶ですが、御幣に分類されています。成長方向に対して、御幣独特の角柱や砲弾のような主軸に左右対称の構造は無く、単結晶で、先端部分の形状が多様なのも特徴の一つです。この結晶は山下(1974)の人工雪実験で見られた三角樹枝状氷晶の内の 1 本の枝に対応するとも思われますが、先端部分の多様な形状は認められていません。また、Schaefer and Cheng(1968)の Pyrotechnic(ヨウ化銀花火法)で氷晶化させた結晶も、これに良く似た点があります。

菱形が連なる部分(単結晶) 多様な先端部 成長方向
構造のポイント
  • 菱形が多重に連なった単結晶。御幣のような主軸に対する左右対称の構造はない。
  • 先端部分の形状が多様なのも特徴。

参考文献

  • 菊地勝弘・亀田貴雄・樋口敬二・山下晃・雪結晶の新しい分類表を作る会メンバー(2012):中緯度と極域での観測に基づいた新しい雪結晶の分類―グローバル分類―.雪氷,74(3),223–241.(CP7 の定義、表3、図1-2 の代表写真)
  • Kikuchi, K., Kameda, T., Higuchi, K., Yamashita, A. and Working group members for new classification of snow crystals (2013): A global classification of snow crystals, ice crystals, and solid precipitation based on observations from middle latitudes and polar regions. Atmospheric Research, 132–133, 460–472.
  • Sato, N. and K. Kikuchi (1985): Formation mechanisms of snow crystals at low temperature. Ann. Glaciol., 6, 232–234.(御幣が凍結雲粒から成長すること、先端角の頻度分布)
  • Kobayashi, T., Y. Furukawa, K. Kikuchi and H. Uyeda (1976): On twinned structures in snow crystals. J. Cryst. Growth, 32, 233–249./Kobayashi, T., Y. Furukawa, T. Takahashi and H. Uyeda (1976): Cubic structure models at the junctions in polycrystalline snow crystals. J. Cryst. Growth, 35, 262–268.
  • Uyeda, H. and K. Kikuchi (1982): Some considerations on combination of bullets which have the axial angle between the c-axes of 90°. J. Fac. Sci., Hokkaido Univ., Ser. VII, 7, 145–157.
  • 山下晃(1974):大型低温箱を使った氷晶の研究.気象研究ノート,123,49–94.
  • Schaefer, V. J. and R. Cheng (1968): The effect of nucleus on ice crystal structure. Proc. Inter'l Conf. Cloud Physics, Toronto, Canada, 255–259.