雪結晶グローバル分類 CP8 の立体モデル
矛先状結晶(CP8a 矛先・CP8b 砲弾集合付矛先・CP8c 交差角板付矛先・CP8d 多重矛先)
グローバル分類(菊地ほか 2012;Kikuchi et al. 2013)の【CP8:矛先状結晶(Spearhead-type crystal)】は、先端の形状が「矛先」に似ていることから、著者の一人(KK)が名付けた名称です。御幣(CP7)に似ていますが、矛先の先端の角度は約 60° で御幣(約 80°)より狭くなっています。御幣と同じく双晶からなる多結晶ですが、各段階で見られる角柱や砲弾の一柱面だけが成長したというには、柱面の外形がはっきりしません。また、左右対称の結晶境界に沿って突起状の結晶が連なって見えるのが多いのも特徴の一つです。これらの点で御幣とは大分違いがはっきりしています。十分成長したものは数 mm、温度範囲も −25 ℃以下です。「CP8a:矛先」には、御幣には見られなかった先端の角度の違いと、結晶の先端だけが飛び抜けて大きいことが挙げられます。「CP8b:砲弾集合付矛先」「CP8c:交差角板付矛先」は、矛先の成長方向と反対側に砲弾集合または交差角板が成長しているもので、「CP8d:多重矛先」は、成長する矛先の先端が一旦閉じた形状から二度、三度と矛先の先端が複数回成長を繰り返している結晶です。平均的な大きさは 2〜5 mm です。
御幣(CP7)との違い。 ①先端の開き角が約 60°(御幣は約 80°)。②先端だけが飛び抜けて大きい。③左右対称の結晶境界に沿って突起状の結晶が連なって見えることが多い。④御幣に見られる骸晶角柱や渦巻状の柱面の異常成長のような、十分な骸晶構造の成長が認められない。各モデルの「先端の角度を表示」で、60° の開き角を確認できます。
できかたと中心。 矛先も御幣と同じく双晶からなる多結晶で、過冷却の雲粒が凍るときに多結晶になり、向きの違う結晶粒の粒界が外へ伸びてできたものと考えられます(御幣について Sato and Kikuchi 1985、多結晶化の機構は Kobayashi et al. 1976)。したがって中心にあるのは「なめらかな球」ではなく、向きの違う結晶粒が寄り集まった核です。もとの雲粒は 10〜50 µm、結晶は 2〜5 mm まで育つので、写真でも中心に丸い玉は見えません。モデルでは中心核を短い六角柱の集まりとして小さく描いてあります。
モデルの見方。 中心核から成長方向へ、左右対称に境界の突起(論文のいう「のこぎりの歯のように連なる突起」)が並び、先端に大きな矛先(三角形の板)が付く構造にしました。「段の数」で突起の段数を変えられます。
画面をドラッグすると回転、ホイール(スマートフォンではピンチ)で拡大縮小できます。各モデルは論文の記載と代表写真をもとにした模式図で、寸法比は見やすさのため誇張しています。
1. CP8a:矛先Spearhead
先端の角度が約 60° で、結晶の先端だけが飛び抜けて大きい結晶です。左右対称の結晶境界に沿って突起状の結晶が連なっています。
構造のポイント
- 先端の開き角は約 60°(御幣は約 80°)。先端だけが飛び抜けて大きい。
- 左右対称の結晶境界に沿って突起状の結晶が連なる。
- 双晶からなる多結晶。中心は多結晶の凍結雲粒で、柱面の外形ははっきりせず、骸晶構造の成長も認められない。
2. CP8b:砲弾集合付矛先Spearhead with combination of bullets
矛先の成長方向と反対側に、砲弾集合(C4d)が成長しているものです。
構造のポイント
- 矛先の反対側に砲弾集合が付く。矛先の部分は CP8a と同じ構造。
3. CP8c:交差角板付矛先Spearhead with crossed plates
矛先の成長方向と反対側に、交差角板(CP4)が成長しているものです。
構造のポイント
- 矛先の反対側に交差角板が付く。矛先の部分は CP8a と同じ構造。
4. CP8d:多重矛先Multiple spearhead
成長する矛先の先端が一旦閉じた形状から、二度、三度と矛先の先端が複数回成長を繰り返している結晶です。「矛先の数」スライダーで繰り返しの回数を変えられます。
構造のポイント
- 矛先の先端が一旦閉じてから、その先に再び矛先が成長することを繰り返す。
- モデルでは 2〜4 回の繰り返しを表示できる。
参考文献
- 菊地勝弘・亀田貴雄・樋口敬二・山下晃・雪結晶の新しい分類表を作る会メンバー(2012):中緯度と極域での観測に基づいた新しい雪結晶の分類―グローバル分類―.雪氷,74(3),223–241.(CP8 の定義、表3、図1-2 の代表写真)
- Kikuchi, K., Kameda, T., Higuchi, K., Yamashita, A. and Working group members for new classification of snow crystals (2013): A global classification of snow crystals, ice crystals, and solid precipitation based on observations from middle latitudes and polar regions. Atmospheric Research, 132–133, 460–472.
- Sato, N. and K. Kikuchi (1985): Formation mechanisms of snow crystals at low temperature. Ann. Glaciol., 6, 232–234./Kobayashi, T., Y. Furukawa, K. Kikuchi and H. Uyeda (1976): On twinned structures in snow crystals. J. Cryst. Growth, 32, 233–249.(低温型の双晶が凍結雲粒の多結晶化から生じること)