雪結晶グローバル分類 P3 の立体モデル

樹枝状結晶(P3a 星六花・P3b 樹枝六花・P3c 羊歯六花)

グローバル分類(菊地ほか 2012;Kikuchi et al. 2013)の【P3:樹枝状結晶(Dendrite-type crystal)】は、Magono and Lee(1966)では P1「正規六花」の小分類だった星状六花(P1d)・普通樹枝(P1e)・羊歯状六花(P1f)を中分類に格上げしたもので、中緯度で代表的な結晶の特徴をはっきりさせるための変更です。小分類名は「星六花」「樹枝六花」「羊歯六花」で、「〜状」は中分類を意味する語として小分類名からは外されました。これまで「樹枝状六花」「樹枝状結晶」と呼ばれてきたものに対応する単独の結晶名は中谷にも ML にもなく、中谷の Ⅲ1vi、ML の P1e 普通樹枝が相当します。平均的な大きさは 1〜3 mm で、大きなものは 10 mm に達します。

3 型の違いは枝分かれの階層。 6 本の主枝だけなら星六花、主枝に 60° の側枝が付けば樹枝六花、その側枝にさらに側枝が付いてシダの葉のように密になれば羊歯六花です。モデルでは主枝・側枝・側枝の側枝を色分けし、「成長」スライダーで、中心から枝の先端が伸びていき、通過したあとに側枝が発達していく様子を模式的に再現します。

角度はすべて 60°。 主枝は 60° おき、側枝は主枝から 60°、側枝の側枝は側枝から 60°(つまり主枝と平行)になり、どの階層も同じ六方格子に乗ります。なお、中心にはっきりした角板があるものは P4g 樹枝付角板に分類され、論文はふつう樹枝六花と呼ばれる結晶の多くが実は樹枝付角板だと指摘しています。

画面をドラッグすると回転、ホイール(スマートフォンではピンチ)で拡大縮小できます。各モデルは論文の記載と代表写真をもとにした模式図で、板の厚みなどの寸法比は見やすさのため誇張しています。

1. P3a:星六花Stellar

側枝のない細い 6 本の主枝が中心の小さな核から 60° おきに伸びた、もっとも単純な六花です。ML の P1d 星状六花に対応します。枝は先端に向かってわずかに細くなり、側枝は出ません。「成長」スライダーを動かすと、6 本の枝が同時に先端を伸ばしていく様子が見えます。

主枝
構造のポイント
  • 中心の小さな核から 6 本の主枝が 60° おきに伸びる。側枝はない。
  • 枝は根元がやや太く、先端に向かって細くなる。
  • P3b・P3c とは枝分かれの有無だけが違い、主枝の配置は共通。

2. P3b:樹枝六花Dendrite

6 本の主枝に 60° の側枝が付いた、いわゆる雪の結晶の代表形です。ML の P1e 普通樹枝に対応し、「樹枝状六花」「樹枝状結晶」と呼ばれてきたものの多くがこれです。側枝は主枝の根元側ほど長く、先端に向かって短くなります。「枝の次数で色分け」を外すと 1 枚の結晶としての見え方になります。

主枝 側枝
構造のポイント
  • 主枝 6 本(60° おき)に、左右対称の側枝が主枝から 60° の向きに付く。
  • 側枝は根元側ほど長く、先端に向かって短い。側枝どうしは互いに平行。
  • 「成長」を途中で止めると、先端が通過したあとから側枝が発達していく段階が見える。

3. P3c:羊歯六花Fern

側枝にさらに側枝が付き、シダ(羊歯)の葉のように密に枝分かれした六花です。ML の P1f 羊歯状六花に対応します。側枝の側枝も 60° の向きなので主枝と平行になり、全体が細かな格子模様のように見えます。樹枝状結晶の中ではもっとも大きくなりやすく、5 mm を超えるものもあります。

主枝 側枝 側枝の側枝
構造のポイント
  • 主枝 → 側枝 → 側枝の側枝、と 3 階層の枝分かれ。側枝の間隔も樹枝六花より密。
  • 側枝の側枝は側枝から 60°、すなわち主枝と平行な向き(先端側)か、主枝から 120° の向き(根元側、短い)に出る。
  • 階層が増えるほど枝は細く短くなり、全体はシダの葉のような模様になる。

参考文献

  • 菊地勝弘・亀田貴雄・樋口敬二・山下晃・雪結晶の新しい分類表を作る会メンバー(2012):中緯度と極域での観測に基づいた新しい雪結晶の分類―グローバル分類―.雪氷,74(3),223–241.(P3 の定義、表3、図1-1 の代表写真)
  • Kikuchi, K., Kameda, T., Higuchi, K., Yamashita, A. and Working group members for new classification of snow crystals (2013): A global classification of snow crystals, ice crystals, and solid precipitation based on observations from middle latitudes and polar regions. Atmospheric Research, 132–133, 460–472.
  • 菊地勝弘・梶川正弘(2011):雪の結晶図鑑.北海道新聞社(羊歯六花の大きさに関する記述).
  • Magono, C. and Lee, C. W. (1966): Meteorological classification of natural snow crystals. J. Fac. Sci., Hokkaido Univ., Ser. VII, 2, 321–335.(P1d〜P1f)