雪結晶グローバル分類 P4 の立体モデル
複合板状結晶(P4a 角板付六花・P4b 扇付六花・P4c 角板付樹枝・P4d 扇付樹枝・P4e 枝付角板・P4f 扇付角板・P4g 樹枝付角板)
グローバル分類(菊地ほか 2012;Kikuchi et al. 2013)の【P4:複合板状結晶(Composite plane-type crystal)】は、Magono and Lee(1966)の P2「変遷六花」を名称変更した中分類で、7 つの小分類の名前は ML のままです。六花(星六花)の先端に角板や扇が成長した P4a・P4b、樹枝(樹枝六花)の先端に角板や扇が成長した P4c・P4d、角板の先端(角)に少しだけ枝・扇・樹枝が成長した P4e〜P4g からなります。平均的な大きさは 1〜3 mm で、大きなものは 10 mm に達します。論文は、ふつう「樹枝六花」と分類される結晶の多くが、実は中心に角板を持つ「樹枝付角板」であることが多いと指摘しています。
名前の読み方。 小分類名は「(付加部分)付(土台)」の形です。「角板付六花」なら土台が六花で、その先端に角板が付いたもの、「樹枝付角板」なら土台が角板で、その角に樹枝が付いたものです。モデルでは土台を薄紫、付加部分を緑で色分けし、「付加部分の成長」スライダーで、土台だけの状態(星六花・樹枝六花・角板)から完成形までを再現します。
できかた。 7 型とも 1 枚の平面的な単結晶です。旧名称の「変遷六花」が示すように、一般には落下中に温度や過飽和度が変わって成長する形が切り替わる(角板 ⇄ 扇 ⇄ 枝・樹枝)ことで、こうした複合形になると考えられています。P6(立体状結晶)は付加部分が凍結雲粒を核にして面の外へ伸びる点で、P4 とは区別されます。
画面をドラッグすると回転、ホイール(スマートフォンではピンチ)で拡大縮小できます。各モデルは論文の記載と代表写真をもとにした模式図で、板の厚みなどの寸法比は見やすさのため誇張しています。
1. P4a:角板付六花Stellar with plates
星六花(P3a:側枝のない細い 6 本の枝)の先端に、六角形の角板が成長した結晶です。枝は細いまま伸び、最後に角板の成長条件に変わったことで先端だけが角板になっています。角板の六角形の向きは、中心の角板や枝の方向と同じ格子(60° 刻み)にそろいます。
構造のポイント
- 土台は星六花:中心の小さな角板と、側枝のない細い 6 本の枝。
- 各枝の先端に角板。角板の頂点の 1 つが枝の方向を向き、六角形の向きは全部そろう(単結晶)。
- 「付加部分の成長」を 0 にすると星六花(P3a)そのものになる。
2. P4b:扇付六花Stellar with sectors
星六花の先端に扇(扇六花 P2a の 1 セクター分の形)が成長した結晶です。角板付六花との違いは先端の形だけで、扇は付け根が細く先端に向かって広がり、外側の縁は六角形の角(120°)の形になります。
構造のポイント
- 土台は P4a と同じ星六花。
- 各枝の先端に扇。扇の外側の縁は 2 本の直線が 120° で出会う六角形の角の形で、格子の向きは枝と同じ。
- 扇は枝の先端から少し手前を付け根にして広がる。
3. P4c:角板付樹枝Dendrite with plates
樹枝六花(P3b:60° の側枝を持つ 6 本の枝)の先端に角板が成長した結晶です。土台が星六花ではなく樹枝六花である点が P4a との違いで、側枝は途中まで伸びていて、先端だけが角板になっています。
構造のポイント
- 土台は樹枝六花:6 本の枝に 60° の側枝。
- 各枝の先端に角板。角板の六角形の向きは中心・側枝と同じ格子。
- 「付加部分の成長」を 0 にすると樹枝六花(P3b)になる。
4. P4d:扇付樹枝Dendrite with sectors
樹枝六花の先端に扇が成長した結晶です。側枝の付いた枝の先に、付け根の細い扇が広がります。P4b(扇付六花)とは土台が樹枝六花か星六花かの違いです。
構造のポイント
- 土台は P4c と同じ樹枝六花。
- 各枝の先端に扇。側枝は扇の手前まで。
- 先端の形(角板か扇か)と土台の形(星六花か樹枝六花か)の組み合わせで P4a〜P4d の 4 型が決まる。
5. P4e:枝付角板Plate with branches
角板(P1a)の 6 つの角から、短い単純な枝が少しだけ伸びた結晶です。論文の言う「角板の先端に少しだけ枝が成長した」形で、角板が主体で枝は付け足し程度です。枝は角板の頂点の方向(a 軸方向)へまっすぐ出ます。
構造のポイント
- 土台は大きな六角形の角板。
- 6 つの角から、側枝のない短い枝が頂点の方向へ伸びる。枝の長さは角板の半径より短い。
- 「付加部分の成長」を 0 にすると角板(P1a)になる。
6. P4f:扇付角板Plate with sectors
角板の 6 つの角から扇が広がった結晶です。角板の角を付け根にして扇が外へ開くので、全体としては大きな六角形に 6 つの切れ込みが入ったような輪郭になります。扇の外側の縁の向きは中心の角板の辺と平行で、格子がそろっていることが分かります。
構造のポイント
- 土台は六角形の角板。6 つの角に扇の付け根がある。
- 扇は付け根が細く外へ向かって広がり、外側の縁は 120° の角(六角形の頂点の形)。
- 隣り合う扇の間に V 字の切れ込みが残る。
7. P4g:樹枝付角板Plate with dendrites
角板の 6 つの角から樹枝(60° の側枝を持つ枝)が伸びた結晶です。中心に六角形の角板があり、そこから樹枝が広がる、いわゆる「雪の結晶」らしい形で、論文によれば、ふつう樹枝六花と分類されている結晶の多くはこの樹枝付角板です。P3b 樹枝六花との違いは、中心が小さな核ではなくはっきりした角板であることです。
構造のポイント
- 土台は中心の角板。角板が先にでき、その後に樹枝の成長条件に変わったことを示す。
- 6 つの角から、60° の側枝を持つ樹枝が頂点の方向へ伸びる。側枝は根元ほど長い。
- 「付加部分の成長」を途中で止めると、角板から樹枝が伸び始めた段階が見える。
参考文献
- 菊地勝弘・亀田貴雄・樋口敬二・山下晃・雪結晶の新しい分類表を作る会メンバー(2012):中緯度と極域での観測に基づいた新しい雪結晶の分類―グローバル分類―.雪氷,74(3),223–241.(P4 の定義、表3、図1-1 の代表写真)
- Kikuchi, K., Kameda, T., Higuchi, K., Yamashita, A. and Working group members for new classification of snow crystals (2013): A global classification of snow crystals, ice crystals, and solid precipitation based on observations from middle latitudes and polar regions. Atmospheric Research, 132–133, 460–472.
- Magono, C. and Lee, C. W. (1966): Meteorological classification of natural snow crystals. J. Fac. Sci., Hokkaido Univ., Ser. VII, 2, 321–335.(P2a〜P2g)