雪結晶グローバル分類 P5 の立体モデル
分離・多重六花状結晶(P5a 二花・P5b 三花・P5c 四花・P5d 十二花・P5e 十八花・P5f 二十四花)
グローバル分類(菊地ほか 2012;Kikuchi et al. 2013)の【P5:分離・多重六花状結晶(Separated and multiple dendrite-type crystals)】は、Magono and Lee(1966)の P3「不規則六花」と P4「十二花」を、六花が分離したもの・併合したものが多いという理由で統合した中分類です。六花のうち一部の枝だけで降ってきた「分離六花」(P5a 二花・P5b 三花・P5c 四花)と、六花が重なって枝の数が 6 の倍数になった「多重六花」(P5d 十二花・P5e 十八花・P5f 二十四花)からなります。平均的な大きさは 1〜3 mm で、成長温度範囲はもとの六花と同じです。
分離六花(P5a〜P5c)の成因。 成長の早い段階で六花から分かれてそれぞれが成長したか、六花に成長したあと風などの影響で分離したと考えられています。早い段階で分かれたものは、分離後も成長が続くため、六花より枝の先端や扇の部分が大きく幅広になります。まれに、鼓型のように中心の短い角柱や凍結雲粒の上下に、二花と一花(→三花)、二花と二花(→四花)、三花と一花(→四花)が成長することもあります。五花はほとんど見つかりません。
多重六花(P5d〜P5f)の成因。 枝の数が 6 の倍数なので六花が基本になっていることは明らかで、多くは、降ってくる途中で同じ種類の結晶どうしが中心をほぼ一致させ、わずかに角度をずらして付着・併合したもの(中谷の付着・併合説=雪片説)と考えられています。小林禎作の「回転双晶説」(角柱の上下を結晶主軸のまわりに少し回転させ、その上下に樹枝六花が成長して十二花になる)もありますが、十八花や二十四花を説明しにくいため、著者らは付着・併合説が多いとみています。図鑑の十二花の例では、中心部を拡大すると少なくとも 8 個の板状結晶が重なっていました。
画面をドラッグすると回転、ホイール(スマートフォンではピンチ)で拡大縮小できます。各モデルは論文と図鑑の記載をもとにした模式図で、板の厚みなどの寸法比は見やすさのため誇張しています。
1. P5a:二花Two branches
六花のうち向かい合う 2 本の枝(180°)だけで降ってきた結晶です。写真では枝の先端に大きな扇や角板が付いて鉄アレイのような形になるものが多く、六花より先端が大きく幅広なことが、早い段階で分かれて別々に成長した証拠になります(図鑑コラム④)。モデルは扇付六花風の枝 2 本を持つ単結晶で、「六花と比較」を動かすと、失われた 4 本の枝の位置を半透明で重ねて表示します。枝の角度が六花の格子(60° 刻み)そのものであることが分かります。
構造のポイント
- 枝は 2 本とも同じ a 軸上(180°)。中心の小さな角板から伸びる。
- 枝の先端には大きな角板、途中の 60° 側枝の先にも小さな角板(扇付六花・角板付六花の枝と同じ構造)。
- 「六花と比較」で、六花の残り 4 本の位置(60°・120°・240°・300°)を半透明で重ねられる。
- 全体は 1 枚の単結晶で、真横から見ると同一平面上にある。
2. P5b:三花Three branches
六花の枝が 1 本おきに 3 本(120°)残った Y 字形の結晶です。図鑑コラム④の図 2 のように、樹枝状の枝の先端が細長い角板になっているものがよく見られます。基本の成因は二花と同じ「六花からの分離」ですが、まれに、鼓型のように中心の短い角柱や凍結雲粒の上に二花、下に一花が成長して三花になることもあります。下のボタンでこの 2 つの型を切り替えられます。鼓型では上下の結晶が別の高さにあるので、「真横から」見ると分離型(同一平面)との違いが分かります。
構造のポイント
- 分離型:3 本の枝は 120° おき(六花の 1 本おき)。樹枝状の枝の先端に細長い角板。
- 鼓型:短い六角柱の上面に二花(180°)、下面に一花。柱と上下の結晶は同じ格子を共有するので、枝はすべて 60° 刻みの方向に乗る。
- 鼓型は真上から見ると枝が 3 本だが、120° 対称にはならない(0°・120°・180°)。
- 「分解」(鼓型のとき)で上下の結晶を引き離すと、二花+一花の組み合わせが見える。
3. P5c:四花Four branches
六花から向かい合う 1 組の枝が抜けた 4 本(0°・60°・180°・240°)で、X 字形になる結晶です。写真では細長い樹枝状の枝が多く、六花の樹枝六花と同じ側枝を持ちます。二花と二花が中心の短い角柱や凍結雲粒の上下に成長して四花になることもあり、真上から見るとどちらも同じ X 字ですが、鼓型は上下 2 枚の結晶が別の高さにあります。
構造のポイント
- 分離型:枝は 0°・60°・180°・240° の 4 本。隣り合う枝の角度は 60° と 120° で、X 字形になる。
- 枝は樹枝六花型(60° の側枝付き)。六花から向かい合う 1 組(120°・300°)が抜けた形。
- 鼓型:短い六角柱の上面に二花(0°・180°)、下面にもう 1 つの二花(60°・240°)。
- 「真横から」で、分離型は 1 枚、鼓型は上下 2 枚に分かれていることを確認できる。
4. P5d:十二花12-branches
六花 2 枚が中心をほぼ一致させ、30° ずれて重なった結晶です。樹枝状結晶が降っているときに、その中にまとまって降ってくることがあります。モデルは広幅六花風の六花 2 枚を色分けして重ねたもので、「分解」で 2 枚を上下に引き離せます。「回転のずれ」を 0° にすると 2 枚の枝が重なって六花に見え、30° でちょうど等間隔の十二花になります。実際の結晶では、さらに小さな角板や星六花が何枚も内側に重なっていることがあります。
構造のポイント
- 六花 2 枚(各 6 本、計 12 本)。2 枚目は 30° 回転し、1 枚目のすぐ下に付着している。
- 中心はほぼ一致しているが、モデルではわずかにずらしてある(図鑑の観察では内側の角板が少しずれて重なる)。
- 「分解」で 2 枚が上下に分かれ、それぞれが普通の六花であることが分かる。
- 「回転のずれ」で、六花 2 枚の重なり方と枝の間隔の関係を確かめられる。
5. P5e:十八花18-branches
六花 3 枚が 20° ずつずれて重なった、十二花よりまれな結晶です。観測の頻度が増すにつれて見つかり、グローバル分類で新たに小分類に加えられました。枝が 18 本あると隣どうしの間隔が狭くなるので、写真では細い樹枝状の枝が密に並んだ放射状に見えます。モデルは樹枝六花風の六花 3 枚を色分けして重ね、「分解」で 3 枚に引き離せます。
構造のポイント
- 六花 3 枚(計 18 本)。2 枚目は 20°、3 枚目は 40° 回転して順に下へ付着している。
- 枝の間隔は 20°。十二花(30°)より狭く、細い樹枝状の枝が密に並ぶ。
- 回転双晶説では 3 枚重ねを説明しにくいことが、付着・併合説が有力とされる理由の一つ。
6. P5f:二十四花24-branches
六花 4 枚が 15° ずつずれて重なった、多重六花の中でもっとも珍しい結晶です。図鑑の写真では、広幅の枝を持つ六花が何枚も重なり、中心付近が複雑に見えます。モデルは広幅六花風の六花 4 枚を色分けして重ねたもので、下の枚ほど少し小さくしてあります。「分解」で 4 枚に引き離すと、それぞれが普通の六花であることが分かります。
構造のポイント
- 六花 4 枚(計 24 本)。15° ずつ回転して順に下へ付着している。
- 枝の間隔は 15°。先端の角板が隣の枚の枝と重なるため、真上から見ると中心付近が複雑になる。
- 「回転のずれ」を 0° に戻すと 4 枚が重なって六花 1 枚のように見える。
参考文献
- 菊地勝弘・亀田貴雄・樋口敬二・山下晃・雪結晶の新しい分類表を作る会メンバー(2012):中緯度と極域での観測に基づいた新しい雪結晶の分類―グローバル分類―.雪氷,74(3),223–241.
- Kikuchi, K., Kameda, T., Higuchi, K., Yamashita, A. and Working group members for new classification of snow crystals (2013): A global classification of snow crystals, ice crystals, and solid precipitation based on observations from middle latitudes and polar regions. Atmospheric Research, 132–133, 460–472.
- 菊地勝弘・梶川正弘(2011):雪の結晶図鑑.北海道新聞社(P5 の解説と、コラム④「二花、三花、四花の結晶はあるの?」、コラム⑤「十二花、十八花など多重六花はどうしてできる?」).
- Magono, C. and Lee, C. W. (1966): Meteorological classification of natural snow crystals. J. Fac. Sci., Hokkaido Univ., Ser. VII, 2, 321–335.