雪結晶グローバル分類 P6 の立体モデル

立体状結晶(P6a 立体扇付角板・P6b 立体樹枝付角板・P6c 立体扇付樹枝・P6d 立体樹枝付樹枝)

グローバル分類(菊地ほか 2012;Kikuchi et al. 2013)の【P6:立体状結晶(Spatial assemblage of plane-type crystal)】は、Magono and Lee(1966)の P6「立体型」を引き継いだ中分類です。降ってくる途中の板状結晶に過冷却雲粒が付着して凍結し、それが核になって「扇六花」型や「樹枝六花」型が立体的に成長した結晶で、もとの結晶が角板なら P6a(扇が成長)・P6b(樹枝が成長)、樹枝六花なら P6c(扇)・P6d(樹枝)になります。平均的な大きさは 1〜3 mm です。板状結晶群のほとんどは平面的(2 次元)に成長しますが、P6 は数少ない立体的(3 次元)な雪結晶で、特に「立体樹枝付樹枝」は典型的な 3 次元構造をもちます(図鑑コラム⑥)。

できかた。 ① 角板や樹枝六花が平面的に成長する → ② 落下中に過冷却雲粒が付着して凍結する → ③ 凍結した雲粒が新しい核になり、そこから扇や樹枝が、もとの結晶の面から傾いた向きに伸びる。雲粒から生まれた結晶は、もとの結晶と結晶主軸(c軸)の向きが異なるため、扇や樹枝はもとの面の外へ立ち上がります。各モデルの「立体成長」スライダーは、②の雲粒が付着した段階(0)から③の成長後(100)までを再現します。

放射状結晶(P7)との違い。 P7 は、比較的大きな雲粒がまず多結晶として凍結し、その結晶粒のそれぞれから角板や樹枝が放射状に伸びたもので、中心にあるのは凍結雲粒です。P6 は先に 2 次元の結晶があり、その表面に付着した小さな雲粒から新しい結晶が伸びます。

画面をドラッグすると回転、ホイール(スマートフォンではピンチ)で拡大縮小できます。各モデルは論文と図鑑の記載をもとにした模式図で、板の厚みや雲粒の大きさなどの寸法比は見やすさのため誇張しています。

1. P6a:立体扇付角板Plate with spatial sectors

角板(P1a)に付着凍結した雲粒から、扇六花の 1 枚分にあたる扇が立体的に伸びた結晶です。雲粒は角板の縁、特に六角形の角に付きやすく、写真では六角形の角板の角から花びらのような扇が何枚も、面の上下いろいろな向きに立ち上がっています。モデルは角板の 6 つの角と縁の一部に凍結雲粒を置き、そこから扇を斜め上または斜め下へ伸ばしたもの。成長に関わらない雲粒(雲粒付き)もいくつか表面に付けてあります。

もとの角板 凍結雲粒 立体成長した扇
構造のポイント
  • もとの結晶は 1 枚の六角形の角板(平面的な成長)。
  • 角と縁に付着した凍結雲粒が核になり、扇(扇六花の 1 セクター分)がもとの面から 50〜85° ほど立ち上がって伸びる(面にほぼ垂直に近いものが多い)。雲粒によっては 60° 違いの 2 枚目の扇も出る。
  • 扇の向きは雲粒ごとにばらばらで、面の上側に出るものと下側に出るものがある。
  • 「立体成長」を 0 にすると雲粒が付いただけの角板(②の段階)、「真横から」で扇が面から立ち上がる様子が見える。

2. P6b:立体樹枝付角板Plate with spatial dendrites

もとの結晶は P6a と同じ角板ですが、付着凍結した雲粒から伸びるのが樹枝六花の枝(60° の側枝を持つ樹枝)である点が異なります。写真では六角形の角板の 6 つの角から小さな樹枝が斜めに突き出しており、角板の縁に沿って雲粒が並んでいるものもあります。モデルは 6 つの角と縁の雲粒から樹枝を斜めに伸ばしたもの。樹枝は扇より細いので、真横から見るともとの角板と雲粒がよく分かります。

もとの角板 凍結雲粒 立体成長した樹枝
構造のポイント
  • もとの結晶は六角形の角板。角と縁の凍結雲粒が核になる。
  • 雲粒から伸びる樹枝は、新しい結晶の底面内で 60° おきに出るうち、角板から離れる向きのものだけが発達する(1〜2 本)。面からの角度は 50〜85° と急で、角板からほぼ垂直に立ち上がる。
  • 樹枝には 60° の側枝が付き、もとの面から傾いて伸びるので、真上からは樹枝六花のように、真横からは角板から枝が跳ね上がって見える。
  • P6a との違いは雲粒から伸びた結晶が扇か樹枝かだけで、もとの角板と雲粒の付き方は同じ。

3. P6c:立体扇付樹枝Dendrite with spatial sectors

もとの結晶が樹枝六花(P3b)で、枝の先端や途中に付着凍結した雲粒から扇や角板が立体的に伸びた結晶です。論文では「樹枝の先端に立体的に扇が成長したもの」とされ、図鑑の写真では枝先の角板が面から傾いていたり、枝に沿って小さな板が斜めに立っていたりします。モデルは樹枝六花の 6 本の枝の先端と途中に雲粒を置き、先端からは大きめの扇を、途中からは側枝の向きに小さめの扇を斜めに伸ばしたものです。

もとの樹枝六花 凍結雲粒 立体成長した扇
構造のポイント
  • もとの結晶は 6 本の枝に 60° の側枝を持つ樹枝六花(平面)。
  • 枝の先端の雲粒からは大きめの扇が、枝の途中の雲粒からは小さめの扇が、いずれも面から 50〜85° ほど立ち上がって伸びる。
  • 真上から見ると扇付六花や角板付樹枝(P4)に似るが、真横から見ると扇が面の上下に立ち上がっていて、P4 の平面的な結晶と区別できる。

4. P6d:立体樹枝付樹枝Dendrite with spatial dendrites

樹枝六花の枝に付着凍結した雲粒から、さらに樹枝が立体的に伸びた結晶で、立体状結晶の中でもっとも典型的な 3 次元構造です。図鑑の真横から写した写真では、1 本の枝の上に小さな樹枝が櫛の歯のように並んで立ち上がっている様子が見えます。モデルは樹枝六花の枝の先端と途中の雲粒から、側枝付きの樹枝を斜め上下へ伸ばしたもの。「真横から」でもとの面と立ち上がった樹枝の関係を、「分解」で雲粒とそこから伸びた樹枝の対応を確認できます。

もとの樹枝六花 凍結雲粒 立体成長した樹枝
構造のポイント
  • もとの結晶は樹枝六花(平面)。枝の先端と途中に凍結雲粒が付く。
  • 各雲粒から、60° の側枝を持つ小さな樹枝が面から 50〜85° ほど立ち上がって伸びる(真横から見ると V 字状に開く)。先端の雲粒からは枝の延長方向へ大きめに、途中の雲粒からは小さめに。
  • コラム⑥にある通り、樹枝六花に立体的に樹枝六花が成長したものが「立体樹枝付樹枝」。放射樹枝(P7b)は中心の凍結雲粒(多結晶)から枝が出る点で異なる。

参考文献

  • 菊地勝弘・亀田貴雄・樋口敬二・山下晃・雪結晶の新しい分類表を作る会メンバー(2012):中緯度と極域での観測に基づいた新しい雪結晶の分類―グローバル分類―.雪氷,74(3),223–241.
  • Kikuchi, K., Kameda, T., Higuchi, K., Yamashita, A. and Working group members for new classification of snow crystals (2013): A global classification of snow crystals, ice crystals, and solid precipitation based on observations from middle latitudes and polar regions. Atmospheric Research, 132–133, 460–472.
  • 菊地勝弘・梶川正弘(2011):雪の結晶図鑑.北海道新聞社(P6 の解説と、コラム⑥「立体状結晶と放射状結晶はどこが違う?」).
  • Magono, C. and Lee, C. W. (1966): Meteorological classification of natural snow crystals. J. Fac. Sci., Hokkaido Univ., Ser. VII, 2, 321–335.