雪結晶グローバル分類 P7・P8 の立体モデル
放射状結晶(P7a 放射角板・P7b 放射樹枝)と非対称板状結晶(P8a 非対称板状・P8b 複雑多重角板)
グローバル分類(菊地ほか 2012;Kikuchi et al. 2013)では、板状結晶群『P』の中分類として【P7:放射状結晶(Radiating assemblage of plane-type crystal)】と【P8:非対称板状結晶(Asymmetrical plane-type crystal)】が置かれています。P7 は Magono and Lee(1966)の P7「放射型」を、P8 は同じく P5「畸形」を引き継いだもので、平均的な大きさは P7 が 1〜3 mm、P8 が 1〜5 mm です。
P7(放射状結晶)はどうやってできるか。 比較的大きな過冷却雲粒が、結晶主軸(c軸)を複数もつ「多結晶」として凍結し、その一つひとつの結晶粒が核になって、そこから角板(→ P7a)や樹枝六花(→ P7b)が放射状に伸びたものです。板状結晶群の多くは平面的(2次元)に成長しますが、P7 は数少ない立体的(3次元)な雪結晶です。
P6(立体状結晶)との違い。 P6 は、平面的に成長した角板や樹枝に雲粒が付着して凍結し、それが新しい核になって扇六花や樹枝六花が立体的に成長したもの。P7 は最初に凍った雲粒そのものが多結晶で、それぞれの結晶粒から板状結晶が伸びる点が異なります。
P8(非対称板状結晶)は、従来「畸形」とされていた結晶に対応します。単結晶で対称性が崩れたものが P8a、角板(P1a)が多数(結晶によっては 20〜30 個も)連なったり重なったりした対称性のない結晶が P8b です。
画面をドラッグすると回転、ホイール(スマートフォンではピンチ)で拡大縮小できます。各モデルは論文と図鑑の記載をもとにした模式図で、板の厚みなどの寸法比は見やすさのため誇張しています。
1. P7a:放射角板Radiating assemblage of plates
過冷却雲粒が多結晶として凍結すると、中心の凍結雲粒は向きの異なる複数の結晶粒の集まりになり、結晶粒ごとに別々の c軸をもちます。それぞれの結晶粒は自分の c軸に垂直な面(底面)に沿って角板(P1a)を広げるので、角板は凍結雲粒からいろいろな方向へ花びらのように放射状に伸び、全体として立体になります。モデルでは中心を球ではなく、向きの異なる六角柱状の結晶粒が寄り集まった多結晶として表し、そのうち 6 個の結晶粒から 1 枚ずつ角板が伸びています。「c軸を表示」を入れると、各角板が自分の結晶粒の c軸と直交していることが分かります。
構造のポイント
- 中心:向きの異なる六角柱状の結晶粒(多結晶)が寄り集まった凍結雲粒。1 個の球ではない。
- 各結晶粒には固有の c軸があり、角板はその c軸に垂直な底面の方向へ広がる。
- 角板は雲粒の内側へは伸びられないため、結晶粒から外向きに伸びる。その結果、角板どうしは同じ平面に乗らず、全体が 3 次元になる。
- 「真横から」で角板の向きがそろっていないことを、「分解」で角板と結晶粒の対応を確認できる。
2. P7b:放射樹枝Radiating assemblage of dendrites
核は P7a と同じ多結晶の凍結雲粒ですが、各結晶粒から伸びるのが樹枝六花(P3b)型の枝である点が異なります。樹枝は角板より枝の幅が狭いので、中心の凍結雲粒から樹枝が伸びている様子がよく見えます。1 つの結晶粒からは底面内で 60° おきに枝が出ますが、雲粒の内側を向く枝は伸びられないため、外向きの 2〜3 本が扇形に発達します。モデルでは結晶粒ごとに外向きの枝だけを描き、枝には 60° の側枝を付けています。1 個の結晶粒だけ c軸を外向きにしてあり、雲粒の表面に沿って樹枝六花が広がる例になっています。
構造のポイント
- 核は P7a と同じ多結晶の凍結雲粒。結晶粒ごとに c軸の向きが違う。
- 各結晶粒の底面内に 60° おきの主枝を置き、雲粒の内側を向く枝は省略(伸びられない)。主枝には 60° の側枝(樹枝六花型)。
- 枝の幅が角板より狭いので、中心の凍結雲粒と、そこから枝が出ている様子が見えやすい。
- P7a も P7b も核は共通で、成長した結晶が角板なら「放射角板」、樹枝なら「放射樹枝」と分類する。
3. P8a:非対称板状Asymmetrical plane
従来「畸形」とされた結晶のうち、単結晶のものです。六花の各枝の長さや幅が不揃いだったり、角板が正六角形になっていなかったりします。単結晶なので枝の角度は 60° のままで、崩れているのは各方向の成長量のほうです。モデルは角板付六花(P4a)を基本に、6 本の枝の長さ・幅・先端の角板の大きさを不揃いにしたもの。「対称化」スライダーを動かすと、同じ結晶が 6 方向に均等に成長した場合の形へ連続的に変わるので、どこが非対称なのかを比べられます。「正六角形の目安」は、いちばん長い枝を基準にした外接六角形です。
構造のポイント
- 全体が 1 枚の単結晶。中心の角板、6 本の枝、先端の角板はすべて同じ六角格子の向きをもつ。
- 枝の角度は正確に 60°。長さ・幅・先端の角板の大きさだけが不揃い。
- 「対称化」で P4a(角板付六花)の対称形へ連続的に変形する。
- 「真横から」で、P7 と違って全体が同一平面上にある(平面的成長)ことを確認できる。
4. P8b:複雑多重角板Complex multiple plates
角板(P1a)が数個から十数個、結晶によっては 20〜30 個も連なったり重なったりして面的に成長した、対称性のない結晶です。極域でしばしば見られ、グローバル分類で新たに加えられました。論文では単結晶とされているので、モデルではすべての角板の六角形の向きをそろえ、辺どうしが接して連なる角板と、上下にずれて重なる角板を組み合わせています。「分解」で角板を重なりの層ごとに引き離せます。
構造のポイント
- 大きさの異なる角板(P1a)が 20 枚あまり。実際の結晶では数個〜十数個、多いものでは 20〜30 個。
- すべて同じ向き(単結晶)。辺どうしが接して連なる角板と、上下にずれて重なる角板がある。
- 六花のような対称性はなく、全体の輪郭は不定形になる。
- 「分解」で層ごとに引き離すと、どの角板がどこに重なっているかが分かる。
参考文献
- 菊地勝弘・亀田貴雄・樋口敬二・山下晃・雪結晶の新しい分類表を作る会メンバー(2012):中緯度と極域での観測に基づいた新しい雪結晶の分類―グローバル分類―.雪氷,74(3),223–241.
- Kikuchi, K., Kameda, T., Higuchi, K., Yamashita, A. and Working group members for new classification of snow crystals (2013): A global classification of snow crystals, ice crystals, and solid precipitation based on observations from middle latitudes and polar regions. Atmospheric Research, 132–133, 460–472.
- 菊地勝弘・梶川正弘(2011):雪の結晶図鑑.北海道新聞社(P7・P8 の解説と、コラム「立体状結晶と放射状結晶はどこが違う?」).
- Magono, C. and Lee, C. W. (1966): Meteorological classification of natural snow crystals. J. Fac. Sci., Hokkaido Univ., Ser. VII, 2, 321–335.